Mestre Felipe - Eu nasci em Santo Amaro
LV-02
2024年現在、存命の最長老の一人メストリ・フェリッピのカポエイラ人生を娘のシモニさんが聞き書きした作品です。人見知りなメストリを前にして、娘であり、大学で文化管理学を修めたシモニさんだからこそ成しえたきめ細かい叙述は、ビゾウロらが生きた古きバイーアと現在を結ぶ第一級の文献資料に仕上がっています。
詳細は目次をご覧いただきたいのですが、本書は大きく3部構成になっています。第1部ではメストリ・フェリッピの生い立ちやカポエイラを始めた経緯、修行の様子や育てた弟子などについて、第2部はメストリ・フェリッピが同時代を生きたメストリ・ポポ(マクレレ再興の功労者)やノカ・ド・ジャコーらについての回想、身近に伝え聞いたビゾウロ・マンガンガーについての記憶など、第3部はカポエイラにおける倫理、メストリとしての在り方、カポエイラの教育としての価値や社会的役割などについてメストリ・フェリッピ自身のカポエイラ観が語られています。
近年、外国人も含めて若い世代のカポエイラに関する研究や発言は活発になってきていますが、実際にその時代を生きた生き証人の声をこうして直接聞けるのは、もう本当に最後のタイミングに差し掛かっているとも言えます。そういう意味でも別格な価値を持った文献だと言えます。